胸郭出口症候群
腕神経叢が、頸部から上肢に至る間に、狭い間隙で絞扼を受ける絞扼性神経障害である。
絞扼部で受ける力学的ストレスにより、圧迫型と牽引型に大別できる。
腕神経叢は、C5~Th1までの神経根が椎間孔を出た後、分岐と吻合を繰り返して形成され、上肢の運動と知覚を支配するべく、手部に向かう。
多くの末梢神経は絞扼部位と呼ばれるいくつかのトンネルを通過するが、腕神経叢も同様で、以下に述べる3つのトンネルを通過する。
1斜角筋隙
トンネルの
前壁・前斜角筋
後壁・中斜角筋
底面・第1肋骨
腕神経叢
鎖骨下動脈
前・中斜角筋は、頸椎の横突起から、第1肋骨に付着し、頸部の屈曲や回旋に作用する。頸部が固定された状態では、第1肋骨の挙上に作用する。
デスクワークなどで頸部の疲労が蓄積し、前斜角筋と中斜角筋の緊張が更新すると、前壁と後壁の間は狭くなる。
両筋が第1肋骨を引き上げ、底面を上昇するので、このトンネルを通過する腕神経叢が圧迫されることになる。
2肋鎖間隙
上面・鎖骨(鎖骨下筋)
底面・第1肋骨
骨制トンネル
腕神経叢
鎖骨下動脈
鎖骨下静脈
なで肩のように鎖骨が下がった状態では、トンネルの上面が低くなり、腕神経叢と鎖骨下動静脈が圧迫される。
さらに、上肢を挙上し、鎖骨が後方に回旋した場合はトンネルの前壁を構成する肋鎖靭帯も後方に移動するため、トンネルがさらに狭くなる。
3小胸筋下間隙
上面・小胸筋
底面・烏口鎖骨靭帯
線維性トンネル
肩を外転させると、下方に走行していた腕神経叢と鎖骨下動静脈はこのトンネルを支点に向きを変え、上行することになる。そのため、小胸筋下間隙で腕神経叢と鎖骨下動静脈の支点部分に負担がかかる
上肢挙上位で症状が出現することが多く、洗車やつり革を握るなど、上肢を挙上位で使用して発症した例は、過外転症候群と考えられる。
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